「のう、柳生。」







   「なんですか、仁王くん?」







   「クラスの女子が言うとったんじゃが、体育館の脇にある大きな桜の木・・・あれの下で告白したら“想いが叶う”って本当なんかのう?」







   「―――・・・?仁王くんらしくもない質問ですね。・・・確かにそんな噂はあります。しかし噂は噂ですし私は信じていません。

    誰か想いを伝えたい人でも居るんですか?」







   「んにゃ、おらんよ。ただ聞いただけじゃけ気にしなさんな。」







   「そうですか。では私はこれで、彼女を待たせていますので。」







   「プリッ。」





























   
The age that love wants to do (07.屋上での出会い)


























   俺たちは立海大付属高等学校へと進み、華の高校生となった



   もちろんテニス部に所属はしているが1年の間は退屈じゃ・・・さすがに俺でも、いきなりレギュラーは無理じゃしのう

   やっぱり高校生といえば“恋愛”じゃろう!!と、意気込んではみたが俺は“恋愛”というものをしたことがない







   ―――“恋愛”とは何じゃ?







   俺がそんなことを考えている間に、皆は“お付き合い”というモノを始めたらしい

   ・・・先を越された







   丸井とジャッカルは同じクラスの女子、柳生においては3年の先輩・・・幸村が何やら女子と親しげにしちょるのも見た

   柳は・・・?真田は・・・こっちはないの・・・―――いや、あれで一部の女子に人気らしいし・・・



   中学時代は、互いの腹の内が手に取る様に見えていたが、―――・・・いつの間にか表面さえも分からんようになった







   友達よりも恋人ってやつかの・・・



   あぁ、なんか面白くない










   1限目 現代社会

   2限目 数T

   3限目 物理

   4限目 音楽

   5限目 古文

   6限目 英T







   あと1限で終わりじゃ、高等部は7限まであるから辛いのう・・・

   眠いが、あと1限の辛抱じゃけ頑張るか・・・










   ・・・―――キーンコーンカーンコーン










   チャイムが鳴り皆が席に着いた



   しばらくして教科の担当教師が入ってきた・・・が、



   「―――・・・よって、今日の授業は自習にします。」

   教壇に立つや否や、そう言い残し足早に教室を去っていった

   何かあったんかのう?





   ま、何はともあれラッキーじゃ!!

   1番辛い7限目が自習とは、この上なく有難い



   さて何をして過ごそうかのう・・・










   そのまま教室で寝ても良かったんじゃが、教室には例の面々がおり、やりづらい・・・

   俺は教室を抜け出し屋上へと向かった



   ―――他のクラスは授業中・・・誰も居るはずもなく、俺は屋上を独り占めした

   高い空には入道雲がかかり、季節は夏へと移ろうとしていた







   「気持ちがええのう・・・」







   「うん、そうだねー」







   「は?」







   俺は屋上を独り占めしていた・・・ハズ・・・

   いつの間に?







   「仁王くんだっけ?私、。知ってるか、知らないか分からないけど、同じクラス。しかも貴方の後ろの席。」


   上体を起こし振り返ると、其処には見知らぬ女子生徒が居た




   「ス・・・スマンが知らん。」







   「いいよ、いいよ。仁王くん他の人のこと興味なさそうだもん。」







   「俺、そんな風に見えるんか?別に興味ないことは無いんじゃが・・・。」







   「そんなことよりさ、仁王くんってどこ出身の人?あっちこっちの方言混ざってて分らないんだけど。」







   「それは秘密じゃ。これだけは教えられんよ。」







   「なにそれ!気になるよー!」







   初めて知ったクラスメイトは、色々と俺のことを聞いた

   俺も俺で次第にそんな彼女に興味を持ち始め、色々と話をした







   あっという間に授業時間は過ぎ、授業を終えた他のクラスのヤツらが屋上へと来た



   なんだか急に彼女と2人で話しをしている自分が恥ずかしくなり、適当に話を終わらせて教室へと戻った

















   「仁王どこ行ってたんだよ?いい話あんだよ!実は俺の彼女の友達がお前のこと紹介してくれって言ってるんだけど、どうよ!」

   教室に戻ると同時に丸井が駆け寄る





   ―――俗に言う紹介話

   それは願ってもないチャンスのハズなんじゃが・・・







   その時、先程まで屋上で共に過ごしていた彼女が戻ってきた



   なんだか、その話を彼女に聞かれたくなくてまた俺は教室を出た







   「おーい!仁王どこ行くんだよ!」







   丸井の呼びかけにも答えず廊下を走った










   ・・・―――キーンコーンカーンコーン










   ホームルームが始まる合図のチャイムが鳴った



   だが、そんな気分でない俺は行く宛もなく校庭を歩いた・・・―――










   そして体育館に差し掛かった時、一際大きくて立派な木を見つけた







   これじゃのう、女子の言うとった“想いが叶う桜”ってやつは・・・



   夏を目前とした今、木は緑の葉で覆われていて俗に見る桜の姿とはまるで違う

   ・・・普通の木と変わらない







   別に想いを伝える相手がいるわけでもないのに、俺はなんで此処に来たんじゃろうか







   その瞬間、頭の中を彼女の顔がよぎった







   先程始めて知ったクラスメート、・・・たった1時間話をしただけの、・・・



   この気持ちは何じゃろうか・・・もしかして・・・―――これが“恋”なんじゃろうか?







   なんだか急に恥ずかしくなり、俺は足早にその場を後にした







   ―――この気持ちが“恋”なわけがないじゃろう・・・さっき知り合ったばかりじゃし・・・



   じゃこの気持ちは・・・何じゃ?







   俺は自分でも訳が分からなくなり、とりあえずホームルームの終わったであろう教室へ帰ることにした










   思った以上に時間は過ぎホームルームは終わり、ほとんどの生徒は帰宅していた

   今まで特に気にも留めなかった後ろの席にカバンは無く、どうやら彼女も帰宅したらしい



   今日は部活も無いし、俺も帰り支度をして家へ帰ろうかの

   丸井やジャッカルなどの“彼女持ち組”はこんな日は決まって“デート”じゃ







   ・・・ええのう







   その時、帰ったハズの彼女が現れた







   「仁王くん、ホームルームも出ないで何処行ってたの?学校中探したけど居なかったからカバン置いて帰ったのかと思ったよ。」







   俺を探して?・・・―――この広い学校中を?・・・―――どうして?







   「仁王くん?どうしたの?」







   「ん?あぁ、何でもないぜよ。」







   「ところで一緒に帰らない?屋上での続き話したいし!」







   「え?」







   なんじゃこの気持ちは―――・・・胸が締め付けられるみたいじゃ



   ・・・もしかして・・・―――いや・・・やっぱり・・・これが・・・―――“恋”







   そうじゃ!きっとこれが“恋”なんじゃ・・・―――俺は彼女に“恋”をしたんじゃ!!







   「仁王くん?ダメかな?」







   「いや、一緒に帰ろうぜよ。」







   「うん!あ、私のことって呼んでよ。」







   俺の“恋”は始まったばっかじゃ



   いや、もしかしたらこれは“恋”では無いのかもしれん・・・







   でも今はそんな事はどうでもええんじゃ、俺はただ彼女と・・・と一緒に居たいんじゃ






                                          -Fin-










*あとがき*

初☆仁王夢です。彼の話し方は独特なんで苦労しました。
おかしな部分があるかと思いますが、ご了承下さい。
立海大付属高校は2つありますが、一応皆一緒ということでw
(07.06.26)
photo by Sky Ruins